本物を喰った廉価版テレキャスター
1982年に発足したFender Japan。Fender Japanファーストラインナップとして打ち出されたのが、往年の名作であるFender USAヴィンテージギターを復刻した 『VINTAGE SERIES』であった。翌年の1983年、同シリーズの一つとしてリリースされたのが『Fender Japan Telecaster Custom TC72-65』である。
本物は高くて買えないという理由で手にされた廉価版ギター(65,000円)であったが、後に本物に勝るとも劣らないギターであることで知られるようになる。
Fender Japanとは
1970年代後半、Fender USA製ギターの品質はかなり下がっていたと言われている。それを裏付けるように、中古市場でも同時期のFender USA製ギターは比較的低価格となっている。
一方、日本国内ではエレキギターブームということもあり、安い海賊版モデルが出回っていた。海賊版というと品質が悪いイメージがあるが、分解・分析などリバースエンジニアリングが行われており、ギターブランド:GRECO『スーパーリアル・シリーズ』のギターなどはかなりの高品質であった。同シリーズを製造していたのはフジゲン株式会社で、後に評価されている廉価版ギターはフジゲンが製造したものが多くを占めている。
海賊版ギターの対策としてFender USAは、上述の『スーパーリアル・シリーズ』を製造していたフジゲンと共同でFenderJapanを設立した。海賊版を製造していた会社と手を組むとは思い切った舵取りだが、それだけフジゲンの技術力が高かったということだろう。
Fender Japanの当たり年
Fender Japanが製造したファーストラインナップ『VINTAGE SERIES』のギターは品質が高すぎるという理由で、Fender USA本家からストップがかかったと言われている。価格が2倍以上もする本物と同等の品質では困るということだろう。この話が本当かどうかは分からないが、シリアルナンバーにJVの文字を冠したこの『VINTAGE SERIES』は、残念ながら約2年で終了となってしまった。『VINTAGE SERIES』が製造された1982年~1984年のこの2年間がFender Japanの当たり年と呼ばれている。
『Fender Japan Telecaster Custom TC72-65(JVシリアルナンバー)』は1983年にリリースされた為、約1年間しか製造されていないことになる。中古市場でもほぼSOLDOUTとなっており、購入するチャンス自体があまりないのではないだろうか。
スペック
型番:TC72-65※1
シリアルナンバー:JV + 数字5文字
製造期間:1983年~1984年
Body:ソリッド・アッシュボディ
Neck:1ピース・ハードメイプルネック
Fretboard:メイプル指板
Pickup:ヴィンテージ PUx1,FHB PUx1
Pickguard:3プライブラック
Controls:2ボリューム,2トーン
Switching:lead/lead+rythm/rythm
Fiinish:ポリエステル仕上げ
Clolor:ブラック
※1 型番の意味:
TC = テレキャスターカスタム
72 = ’72年式TCのレプリカ
65 = 価格が6万5千円
まとめ
どんなに高額なギターでも、しっくりこないギターはたくさんある。逆に安くて誰にも見向きもされないギターが自分にとっては最高の場合もある。誰にも認められなかった愛機が、のちに評価されるのはなかなかいい気分だろう。『Fender Japan Telecaster Custom TC72-65』のオーナーはそんな気分を味わったのかもしれない。