追憶の即席ラーメン 日清のどん兵衛 きつねうどん

日清のどん兵衛 きつねうどん

『どどーんとうまい』
『きつねどん兵衛』

でお馴染みの日清『どん兵衛 きつねうどん』は、1976年の発売から今日に至るまで国民に愛され続けている即席きつねうどん。即席とは思えない出汁の旨さに、日本人のみならず、外国人からも高い評価を受けている。

古き良きどん兵衛

現在購入することが出来るどん兵衛はもちろん美味しい。その美味しさは誰もが認めるところだが、昔の麺のほうが良かったと感じているどん兵衛ファンが多いこともまた事実だ。中には『マルちゃん赤いきつね』の麺をどん兵衛と入れ替え、古き良きどん兵衛を再現するファンもいる。

本物志向という落とし穴

1992年に日清の『ラ王』が発売されたあたりからだろうか、各社は競ってより本物に近い製品を追求してきた。本物志向の新製品は発表される度に『まるで本物みたい』と驚きをもって迎えられ、以降約30年の時を経て本物志向の即席麺はどれも素晴らしい完成度となった。どん兵衛も例外ではなく2008年のべっぴんうどんを皮切りに本物志向の道を辿ってきた。

しかし、いざ即席きつねうどんを買う段になると、本物志向の麺となったどん兵衛には手が伸びなくなってしまった。気が付くと『マルちゃん赤いきつね』を買い物かごに入れてしまう。本物っぽい麺より、昔ながらの安っぽい麺のほうを選んでしまうのはなぜなのか。

ぼそついたピロピロの麺には、不思議なことに本物のうどんにはない独特な美味しさがある。それに比べて本物っぽい麺は結局のところ本物のうどんには及ばない。そもそも本物のうどんをどん兵衛の出汁に入れて食べたいだろうか? 本物ならうどん屋へ、即席ならより即席らしいうどん、結局はそういうことなのかもしれない。

『マルちゃん 赤いきつね』の台頭

マーケティング会社の調査によると、2022年3月~4月のカップ麺売上ランキングにおいて、上位3位は以下の通りとなっている。

1位:日清カップヌードル
2位:マルちゃん 赤いきつねうどん 東
3位:日清カップヌードル シーフードヌードル

やはり昔の麺が良かったと思うファンが多いのだろう、どん兵衛は上位10位にも入っていない。『べっぴんうどん』以前のどん兵衛であったならこの順位を許してはいなかったはずだ。

改良の歴史

改良の歴史は以下の通り。2008年以降は、より太く厚くつるつるもちもちを目指していることがわかる。

西暦変更点
1976年きつねうどん発売。
1991年おあげを丸大豆100%本物油揚げ仕様に変更。
1994年湯戻し時間を5分から3分に変更。
1998年おあげのサイズを従来比120パーセントに変更。
2000年モチモチした食感とコシ・ねばりのある太い麺に変更。
湯戻し時間を3分から再び5分に変更。
2001年東日本と西日本でおあげの味に変化を付けた。
湯のびに強いうどんに進化。
2008年以下のような特徴の”べっぴんうどん”に変更。
・より厚く
・長さは2倍
・のどごしとモチモチ感アップ
2010年以下のような特徴の”三層太ストレート製法”に変更。
・さらに太く、つるっともっちり
・今までになかった麺質と厚みを実現。

コマーシャル



PROJECT 極光さんのyoutubeチャンネルでは、1976年~1983年に放送されたどん兵衛のCMを見ることができる。

まとめ

どん兵衛のことを考えると、私は1999年発行の『メンタル・ブロックバスター』という本を思い出す。同書は『自由な発想を妨げる心の壁をぶち破る』事を目的としたビジネス書で、個人的にはあまり参考にはならなかったものの、『存在しない問題に関する解決』というセクションはなかなか面白かった。『重要なプロジェクトにおいて今後起こりそうな問題を予測し、納期や予算と戦いながらあれこれと解決策を講じたが、蓋を開けてみたらそもそも問題は存在しなかった。そんなこともあるから、解決策を講じる前には問題の不在性も検討しましょうね。』といったことを学ぶ内容となっていた。2008年のどん兵衛にもきっと、問題はなにもなかったのだと思う。